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【公爵夫人と赤い挽肉】

いつか貴方に食べられたい公爵夫人のお話。



 ずりずり、ずりずり。
暗い部屋に音が響く。
 ずりずり、ずりずり。
木製の筒に赤い腸が巻き取られてゆく。
 ずりずり、すりずり。
規則的な巻き音に絡み合う、絶え間ない断末魔。
 嗚呼、どうしてこうなったんだっけ?

 

 きっかけは、そうだ、あの人との昼食を作ろうと厨房に足を運んだことだった。私の夫はそれは酷い偏食で食事を使用人にまかせることはできない。
そのため毎日私が自らナイフを振るうのだ。

 長い廊下の突き当たり、真鍮のノブを捻ればそこが厨房だ。いつもと変わらぬ器具の数々が私を出迎える。
 しかし、その日は違っていた。
使い慣れた調理道具、特別に取り寄せた食器たち、その全てが無残な姿になって床にぶちまけられていた。呆然と立ちすくむ私の耳に荒い呼吸音が聞こえてきた。部屋の隅、私に隠れるようにそいつはいた。

 薄汚いドブネズミ。

 そのネズミは口端からだらしなくソーゼージをぶら下げて、そして私に見つかったと気づいてはくぐもった悲鳴を上げた。一歩一歩、わざと靴音を響かせて近づく私を見上げて、そのネズミは怯えの色を瞳に滲ませる。その様子がどうにも私を高揚させた。
 もごもごと、言い訳がましくソーゼージを揺らすそいつに私はほほ笑んで言ったものだった。

 「食材を調達させる手間が省けたわ」と。

 あとは啼き叫ぶネズミを地下へ引きずり降ろして、そうして盗まれたソーゼージを奪い返すだけ。
 腸巻き取り器で引きずり出されていく己の内臓を見ながら悲鳴をあげるその気分はどんなものだろう!!
 
 ずりずり、ずりずり。
巻かれてゆく腸と溢れる悲鳴。まだまだ、これから。
 振り回される腕を捕えては挽肉台にかける。ソーゼージは張りのある腸と、新鮮な挽肉から作られるのだ。奪われたものは、奪い返す。そうでなければあの人の妻は務まらない。
 徐々に小さくなる悲鳴を楽しみながら私は挽肉を練り上げる。


 
 「さあ、貴方、召し上がって?」
 今日も貴方を満足させてみせるわ。人間の肉しか食べない貴方を。
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【 2014/07/30 (水) 】 小説 | TB(-) | CM(0)
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