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【3月の沈黙とフランスパン】

おしゃべりなドールが沈黙するお話。


 
 永遠に続くと思われた長い冬は漸く去りゆくと見えて、この日はまだ少し肌寒いながら柔らかな日差しが天窓から降り注いでいた。
暖かなベッドの中春眠を満喫していた私は名残惜しさを振り切りつつ、毛布から這い出し、遅めの朝食を摂るためにキッチンカウンターのバスケットを覗き込んだ。あったあった。先日学校の帰りに寄ったパン屋で、とても魅力的に見えたフランスパン。
 そのパンをパンナイフで2,3片切り取って、そしてバスケットからバターに木苺のジャムを取り出して、私は古びた白ペンキのテーブルに腰かけた。

 

 私の向かいにはもう一脚椅子が置いてあって、それにはドールが控え目に腰かけている。
私がバターパンを口に運ぼうとした瞬間、ドールは口を開いた。
 『今日も私の分、用意してくれないのね』
私はこの声無き声を無視するようにパンをかじる。知っているのだ。人形は言葉を話したりしない。「お前は私の、」

 幻覚だ。

私の声に人形は口を閉ざした。
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【 2014/07/30 (水) 】 小説 | TB(-) | CM(0)
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