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【ある冒険小説の罪と嘲笑】

少年になりたかった青年と、彼を嘲笑う本のお話。



 パタリ、本を閉じる音がする。
その音は、私が本を閉じたその音は、まるで私を責めるように静寂に満ち満ちたこの部屋で私の耳を突き刺した。脳内に声が響く。ああ、これは本の声だ。とりとめもなくそう思った。
 
 『お前はこうはなれない』
 
 分かってるよ、本に返事をする。
そっけないようで、それでいてその言葉には私の今までの感情すべてが封じ込められていることを他の誰でもない、私が一番よく知っていた。
 本を手にしたまま私は何もない部屋で、白い壁を眺め続けていた。小さな窓から入ってくるほんのわずかな陽光は、やがて不安を感じさせる西日へと変わり、とうとう消えた。そのかわりに無機質な蛍光灯がひとりでに点り病的な光を私に叩きつけた。
 
青空の下で草原をかけまわり市場を潜り抜ける。そのような大冒険、少年の勝利。
 『お前はそうはなれない』
 「分かってるよ」
私は、私の手に噛り付いたままの本の嘲笑に、そして私自身に言い聞かせるようにつぶやいた。
 
 

 町はずれの精神病棟のある一室で、本は、私の涙を吸って笑った。
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【 2014/07/30 (水) 】 小説 | TB(-) | CM(0)
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