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某文芸部2014年度第二回三題噺

USBから書きかけの三題噺が出てきたのでUPしておきます。
UPしておけば続きが書きたくなる時が来るかもしれないので。



 
 『こんな世界にサヨウナラ、よ』
あたしの躰は校舎の屋上、それもフェンスの外側に有って。地面に叩き付けられて粉々になる瞬間を今か今かと待ち侘びてる。
パッと空に飛び込めば一瞬ふわりと浮かび上がるような感覚。ぶわあと風が殴り掛かってくる。そしてぐんぐんと近付いてくる、地面。きっと世界が真っ赤に染まって、そうして何もかも分からなくなるに違いないわ。なんて魅力的なことだろう!!
ぐんぐん、ぐんぐん、ぐんぐん―――――。

 そこで、あたしの意識は急浮上する。目前と迫った固いコンクリートのねずみ色はあっという間に遠ざかって、あたしの遥か足元に埋没してる。あたしの体はまだ屋上の縁に有って粉々になんてなっていやしない。
 『死にたいなあ』
特に意味もなく呟いてみる。
あたしの最近の趣味、それが飛び降りの空想だ。こうして一人で屋上に立って、身を乗り出しては地面を覗き込む。目を瞑って、ぐらり、体を投げ出す。その瞬間の心地よさ、開放感と言ったら他では味わえないと思う。

 死ぬ気がないならわざとらしいことするなって?
死ぬ気がないわけじゃない。最初にここに来たときは本当に死ぬつもりだった。今みたいにフェンスに指を絡めて、怖々と足元を覗いたの。それはついこの前のことよ。
死の淵を覗いたその時に感じたのがきゅううって心臓が、肺が締め付けられるような苦しさと、脳が縮小と拡大を繰り返してるような、強烈でありながら気持ち良い目眩。私はその虜になった。それから毎日毎日授業もサボって同じ妄想を繰り広げてる。でも、それも今日で終わり。

 そう、今日こそぐっちゃぐちゃにこの身を潰すの。もう、こんな世界には居られない。
 『だから、ホントのホントに今日が最期なの』
雲を蹴り上げて、赤いジューズをポンと屋上から放り捨てる。そして、あたしはそれを追うように空へ踊り出した。
 『いやっほーーーーーー!!!!』
内臓を吐き出すように思いっきり叫ぶ。そんな自分の大声をかき消してしまうほどの轟音、唸り声。風が、こんなにも近い。
三半規管がもみくちゃにされて、距離感覚が可笑しくなる。確実に落ちているはずなのに、地面がどんどん遠ざかる。屋上の縁からははっきりと見えていたはずのシューズが、今は赤い点のよう。
 『あっはは、ぜんっぜん落ちないよーう!!!!』
両手を広げて空中でくるくる回転してみる。そこで私は不思議なものを見かけた。

 鞄だ。
古びた革の、茶色い鞄。上ががま口式になっていて、それが余計に古臭さを感じさせる。それが、あたしよりちょっとだけ地面に近いところでぷかぷか浮いている。
ぷかぷか、ぷかぷか。
まるでヘリコプターがホバリングするみたいに一定の高さで浮かんでいる。
変なの変なの。でも、死ぬ直前だから案外何でもありなのかもしれない。
 あたしはその妙ちきりんな鞄にうんと手を伸ばしてみた。その瞬間。
 『うわあ!!』
がま口がかぱっと開いた。まるで宇宙人が餌を捕食するみたいに。そして、ぶわああああっとがま口からあっという間に大量の雲があふれ出してあたしをすっぽりと包みこんだ。上下左右の感覚を完全に失ったあたしはただその中を漂うだけ。
 重い。雲が体に纏わりつく。セーラーの襟がじわりと滲む。雲というより、どちらかというと霧みたいだ。
ぶにゃぶにゃ。重たくて冷たくて纏わりつくように漂う霧の中を行くあてもなく彷徨ってみる。落ちてるのか昇ってるのか、それすらも分からない。
 『オジョーサン。』
その時、音が聞こえた。声じゃなくて、音。ばらばらだった音が何とか集まってやっと言葉を紡ぎ出したようなそんな音声。
 『だあれ?』
見えない何かに問いかければあたしの声は霧に溶け込んで消えてしまう。
 『ココダヨ、ココ』
 『どこ?』
 『ココダヨ』
 『だからどこなのよ!!』

 『此処だよ』

 低い、ノイズが混ざったような声があたしの耳元で聞こえた。パッと振り返ってみると、あたしの目の前に大きなシルクハットがふらふらと浮かんでる。帽子のツバの下から、鳩の白いお尻が沢山見え隠れ。
 『変な帽子』
あたしがシルクハットをまじまじと見つめると突然それがガバッと真っ赤な口を開いた。ぞろりと生え揃った鮫のような歯がにたりと弧を描く。
 『お嬢さんは死にたいのかい?』
 『死にたくなかったら落ちてないわ』
 『ほうほう死にたいかあ』
帽子は馬鹿みたいにげらげら笑った。
 『ならばお嬢さん』
帽子はぴたりと口を閉ざしてあたしをまじまじと見つめた(ように感じた)。
 
 『冒険を、してみないかい?』

 『ぼう、けん……?』
 『そうさ、良いだろう。どうせ捨てる命なんだから』
 『どこを冒険するっていうのよ。もう落ちるだけだわ』
 『あの中さ』
帽子の中から鳩のおしりがちょこんと顔を出して、その尻尾があたしの足元を指し示す。そこには、未だに霧を吐き出し続けている鞄。
あんな鞄に入りっこないわ。
 『君くらいの大きさなら問題ないさ。さあ、お行き。チェシャ猫が案内してくれるだろう』

 帽子が言うと同時に、鞄が今度はぐんぐん霧を吸い込み始める。暴風雨の中にでも居るみたいに髪が浚われる。全身がもみくちゃになって、複雑骨折しそう。そうしてあたしはあっという間に鞄に飲み込まれて行った――――。



 続く、かもしれない。

ちなみに三題とは鞄・ミスト(霧)・猫です。

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【 2014/08/04 (月) 】 小説 | TB(-) | CM(0)
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