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【洞窟世界と私の全て】

囚われの少女に囚われる青年のお話。


 
 一歩。また一歩。そうしてまた一歩。
歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く。
延々と、彼女に通じる道を歩いてゆく。
 
 嗚呼、あとどれほど歩けば良いのか。

彼女への道のりは酷く長くて、そしてあまりにも急だ。
蝋燭の灯りだけを頼りに、真っ暗な、洞窟のように狭苦しい通路を歩いてゆく。
恐ろしく急なくだり道で、指間に食い込む下駄の鼻緒だけが唯一、彼女への通路を示す道標。

 いくら歩けども少女の姿は見えない。何て辛く、苦しい道。
それでも、私は毎夜毎夜、歩く。ただ一人、彼女に会うために。


 燭台から溢れた蝋が、私の手首を焼く。手首から肘へ、そして地面に落ちて固まる蝋。
前後左右も分からぬ暗闇で、それだけが点々と私の後を赤く彩る。

 何者かが地面を這う音。何者かが壁面を擦る音。
その全てがこの世界の全て。彼女は此処で、何を考えて生きているのだろう。


 肌が粟立つ。足首に冷気が絡みつく。
 やっと、辿り着いた。

私の眼前には、覚束無い火に照らされた堅牢な鉄格子。
それを、右手でゆっくりと押す。鉄の錆びつく音が、闇を劈いて小さな世界に反射する。
灯りだけを頼りに、手探りで壁を伝い、部屋の隅にひとつずつ、火を灯してゆく。
蝋から蝋へ、全ての火を移してゆけば、瞬く間に黄金に眩く視界。

床に敷き詰められた深紅の絨毯、壁を彩る虹色の壁画、天球を模した群青と銀の天井。
そして、ふんだんに絹があしらわれた天蓋----。

何重にも重ねられた、重く軽やかなシルクを掻き分け掻き分け、私は彼女に手を伸ばす。
 早く、その姿を見せておくれ、美しい君。
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【 2014/07/30 (水) 】 小説 | TB(-) | CM(0)
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