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【素人整形と紫の瞳】

無いものねだりで死ぬお話。


 
 ぬちゃり、
暗い部屋に粘着質な水音が響いた。

 「ホントに良いの?もう遅いけど」
 私は私の下、仰向けに横たわっている彼に向かって呼びかける。彼はただいくらか上気した頬で微笑んでわずかに頷いた。私は細やかに震える指先から意識的に力を抜く。

 チャットで知り合った彼と会ったのはつい先刻のことだった。少しだけ緊張した私の前に現れたのは、穏やかで素朴な、青い瞳を持った青年だった。



 私が握り込んだナイフをわずかに押し込むと彼は眉根を寄せ、しかし嬉しそうに口端を歪めた。慎重に、慎重に、それでも確実にナイフは地へ近づく。

 初めて会った私たちだったが何度もチャットを繰り返し、共通の話題を持っていたためにすぐ、打ち解けることができた。彼の瞳は微笑むと睫毛の陰が差して、より深い青に変化する。それが堪らなく綺麗だった。

 「どうして、貴方は私にこんなこと、させるの?」
 
 私の頬から伝い落ちた汗が彼の鼻梁に落ちる。彼はくすぐったそうにかすかに身を捩った。
 「もう言ったでしょう。君に、逢う前からずっと憧れていた。逢って、さらにその憧憬は強まった。君のその、全てを見透かすような漆黒の瞳に、どうしようもなく魅入られた」
だから、君と同じその瞳を手に入れられないのなら僕は、こんな目など要らない。彼は澄んだ瞳で真っ直ぐに私を見つめて言った。
 彼の眼尻に差し込んだナイフの刃先がついに血管に触れたようで、彼の青を赤く、赤く染め上げてゆく。 
 ぽたり、彼の瞳に溢れた涙に、私の汗だか涙だかが混じって流れた。
 
 私も好きだったのよ、貴方の……。



 私は全体重をナイフの柄に掛けた。ずぷり、刃が沈んで、もう引き返せない量の血が私と、彼と、床を彩ってゆく。彼は小さく吐息を漏らして、それは痛みから出たものなのだろう。

 それでも彼の、初めて逢ったときよりも深い、安堵のような笑みが私の脳裏からは離れない。
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【 2014/07/30 (水) 】 小説 | TB(-) | CM(0)
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